2012年11月9日金曜日

11月9日


◎今日のテキスト

 岩魚《いわな》は、石を食う。石を餌にするわけではないが、山渓の釣り人に言わせると、一両日後に増水があろうという陽気のときには、必ず岩魚は石を食っている。岩魚の腹を割いて、胃袋から小石が出たならば、近日中に台風がくるものと考えてよいと、まことしやかな顔をするのである。
 それは、ほんとうかどうか知らない。だが、小石をまとめた筒の巣のなかに棲んでいる川虫を、石筒のまま岩魚が呑み込んでしまうのは事実である。虫を消化すると、石は自然に排泄されてしまう。
 ――佐藤垢石《こうせき》「石を食う」より

◎顔つき(二)

 日本の場合、民主党と自民党のどちらなのか、テレビに映った顔つきだけで判断するのは(個人的には)とても難しい。現首相などは自民党でしかありえないように見える。
 というのは余談であり、また予断が多分にはいっていると思われるが、その人がどのような性格で、どのような環境で育ち、どのような人生を歩んできたかによって形成される「顔つき」というのは、たしかにあるように思われる。一日中小難しい顔つきをしている人はそれがその人の顔になるだろうし、ずるい顔をしている人はそういう顔つきになる。正直で誠実に生きている人はそういう顔つきになるというのは、科学的分析を持ち出さなくても別段不思議な話ではない。
 最近はめったに耳にすることはないが、昔の人はよく「あの人はいい面構えだ」といったようなことをよくいっていた。現代人はひょっとして、人の顔つきに対する感受性——つまり微細な情報による分析能力——を失いつつある、ということかもしれない。

0 件のコメント:

コメントを投稿