2012年11月6日火曜日

11月6日


◎今日のテキスト

 匂いって何だろう?
 私は近頃人の話をきいていても、言葉を鼻で嗅ぐようになった。ああ、そんな匂いかと思う。それだけなのだ。つまり頭でききとめて考えるということがなくなったのだから、匂いというのは、頭がカラッポだということなんだろう。
 私は近頃死んだ母が生き返ってきたので恐縮している。私がだんだん母に似てきたのだ。あ、また――私は母を発見するたびにすくんでしまう。
 ――坂口安吾『青鬼の褌を洗う女』より

◎表現すること

 音読療法には「テキストを声をだして読む」ことをするが、これは一種の表現療法ともいえる。
 人は絵を描いたり、音楽を演奏したり、踊ったり、自分を表現する行為のなかで癒しを得ることができる。なにかを表現するというのは自分自身のこころと身体の整合性を作るのに役立つからだ。
 ときどき「自分には表現したいことがない」「なにを表現していいのかわからない」という人がいるが、そんなことを気にやむ必要はない。人は表現したいことがあるから表現するのではなく、表現してみてはじめて自分がなにを表現したかったのか「後からわかる」のだ。つまり表現とは自分を再発見することでもある。これがこころの病から回復したり、防止することに役に立つ。

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