2012年11月30日金曜日

11月30日


◎今日のテキスト

 敬太郎《けいたろう》はそれほど験《げん》の見えないこの間からの運動と奔走に少し厭気《いやき》が注《さ》して来た。元々頑丈《がんじょう》にできた身体《からだ》だから単に馳《か》け歩くという労力だけなら大して苦にもなるまいとは自分でも承知しているが、思う事が引っ懸《かか》ったなり居据《いすわ》って動かなかったり、または引っ懸ろうとして手を出す途端《とたん》にすぽりと外《はず》れたりする反間《へま》が度重《たびかさ》なるに連れて、身体よりも頭の方がだんだん云う事を聞かなくなって来た。で、今夜は少し癪《しゃく》も手伝って、飲みたくもない麦酒《ビール》をわざとポンポン抜いて、できるだけ快豁《かいかつ》な気分を自分と誘《いざな》って見た。けれどもいつまで経《た》っても、ことさらに借着をして陽気がろうとする自覚が退《の》かないので、しまいに下女を呼んで、そこいらを片づけさした。
 ――夏目漱石『彼岸過迄』より

◎簡単だけど難しい呼吸法(二)

 呼吸法のもっとも基本は「全部吐ききる」と「いっぱいに吸いきる」そして「一定の速度で呼吸する」だ。
 初めての人は、どの程度吐いた状態が自分の「これ以上吐けない」状態なのかよくわからないことがある。また、どの程度吸った状態が「これ以上吸えない」状態なのかわからないこともある。そしていずれの状態も、あるいはどちらかの状態に痛みをおぼえる人もある。また心理的抵抗感で限度まで吐ききる/吸いきることができない人も多い。
 これがきちんとできるようになるには、毎日の練習が必要なのだ。毎日、おなじことを繰り返し、そのなかで自分の変化を観察する。わずかな変化を知ることで、自分がきちんと呼吸できるようになっていくことを観察する。そのことが大切だ。

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