◎今日のテキスト
空《そら》に真赤《まっか》な雲《くも》のいろ。
玻璃《はり》に真赤な酒の色。
なんでこの身が悲しかろ。
空に真赤な雲のいろ。
――北原白秋『邪宗門』より「空に真赤な」
◎非共感的な現代社会(二)
ペーパーテストで点数をつけられ、序列をつけられる。走ったり飛んだりでは数値を計測され、それもまた序列をつけられる。教師からは努力すれば「上」に行けると教えられ、親からもがんばって成績を上げるように尻をたたかれる。「上」にいけばあたかも幸福が約束されているかのように、競争することを繰り返し教育される。
人と競争すること、相手よりすこしでも上に立つこと、これが習い症となってしまっている。だから、ただ会話していても相手よりすこしでも上位に立とうとして「評価」の言葉を与え、求められてもいないアドバイスを与え、聞かれてもいない自分の物語をまくしたてる。
この習性をべつの習性に——共感的に聞くという習性に起きかえられたとき、そこには競争原理では決して得られることのないおたがいを大切にしあう豊かなつながりの質が生まれるし、競争しなくても人は本来の能力をのばしていけるのだということにも気づくだろう。
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