2012年11月10日土曜日

11月10日


◎今日のテキスト

 橋本の家の台所では昼飯《ひる》の仕度に忙しかった。平素《ふだん》ですら男の奉公人だけでも、大番頭から小僧まで入れて、都合六人のものが口を預けている。そこへ東京からの客がある。家族を合せると、十三人の食う物は作らねばならぬ。三度々々この仕度をするのは、主婦のお種に取って、一仕事であった。とはいえ、こういう生活に慣れて来たお種は、娘や下婢《おんな》を相手にして、まめまめしく働いた。
 炉辺《ろばた》は広かった。その一部分は艶々《つやつや》と光る戸棚《とだな》や、清潔な板の間で、流許《ながしもと》で用意したものは直にそれを炉の方へ運ぶことが出来た。暗い屋根裏からは、煤《すす》けた竹筒の自在鍵《じざいかぎ》が釣るしてあって、その下で夏でも火が燃えた。この大きな、古風な、どこか厳《いかめ》しい屋造《やづくり》の内へ静かな光線を導くものは、高い明窓《あかりまど》で、その小障子の開いたところから青く透き徹《とお》るような空が見える。
 ――島崎藤村『家』より

◎息を吸うことが苦手な人は

 音読療法をやっていると、時々、息をいっぱいに吸うことが苦手な人がいる。胸が痛いとか、肺がいっぱいになる感覚がよくわからない、などと訴える人がいる。
 そういう人には、すこしずつ分けて息を吸うようにすすめたい。
 一気に肺いっぱいに吸うことをめざさず、ある程度吸ったらいったん息を止める。そこから「空気を食べる」ようにひとかたまりずつ、飲んでは(吸っては)止め、飲んでは止め、ということをくりかえして、肺をふくらませていく。
 痛みが出るようならその手前でやめる。毎日呼吸の練習をすれば、呼吸筋群が整えられていき、しだいに呼吸も安定してくる。

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