◎今日のテキスト
此頃ハ天下無二の軍学者勝麟太郎という大先生に門人となり、ことの外かはいがられ候て、まず客ぶんのよふなものになり申候。ちかきうちにハ大坂より十里あまりの地ニて、兵庫という所ニて、おゝきに海軍ををしへ候所をこしらへ、又四十間、五十間もある船をこしらへ、でしどもニも四五百人も諸方よりあつまり候事、私初栄太郎(高松太郎)なども其海軍所に稽古学問いたし、時船乗のけいこもいたし、けいこ船の蒸気船をもつて近のうち、土佐の方へも参り申候。
――坂本龍馬「文久三年五月十七日 坂本乙女あての手紙」より
◎無数の体験記憶といまここの体験
秋が深まってきた。たとえば山の紅葉を見るとき、私たちはどんなことをかんがえるだろうか。
私たちのなかには「紅葉」にまつわるたくさんの記憶があり、年齢を重ねれば重ねるほどそれは多く蓄積されていく。紅葉を見るとき、瞬時にそれらの記憶がよみがえり、いまこの瞬間の紅葉を味わうことから離れ「思い出にひたる」ような思考回路におちいってしまうことがある。
しかしかんがえてみてもほしいのだが、私たちは思い出のなかに生きているのではない。いまこの瞬間を生きているのだ。いまこの瞬間を全身で味わうことが自分自身を生き生きと形づくっていく。
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