◎今日のテキスト
海岸通りに新しい顔が現われたという噂であった――犬を連れた奥さんが。ドミートリイ・ドミートリチ・グーロフは、ヤールタに来てからもう二週間になり、この土地にも慣れたので、やはりそろそろ新しい顔に興味を持ちだした。ヴェルネ喫茶店に坐っていると、海岸通りを若い奥さんの通って行くのが見えた。小柄な薄色髪《ブロンド》の婦人で、ベレ帽をかぶっている。あとからスピッツ種の白い小犬が駈《か》けて行った。
それからも彼は、市立公園や辻《つじ》の広場で、日に幾度となくその人に出逢った。彼女は一人っきりで、いつ見ても同じベレをかぶり、白いスピッツ犬を連れて散歩していた。誰ひとり彼女の身許を知った人はなく、ただ簡単に『犬を連れた奥さん』と呼んでいた。
――アントン・チェーホフ「犬を連れた奥さん」(訳・神西清)より
◎介護予防アーティスト養成講座の二回め
昨日は二回めの「介護予防アーティスト養成講座」が池袋のあうるスポットでおこなわれた。
午前中は運動指導の先生が来られて、高齢者の運動指導法についての講義があった。午後は私が呼吸法と共感的コミュニケーション、そして即興演奏法の講義をおこなった。
この講座には若い人たちが参加していて、やりがいがある。私にとって、参加者たちに自分の技術を伝えて世の中の役に立ってもらえるようにそれを身につけてもらえること、そのことに貢献できることが望みだ。また、自分自身が獲得してきた技術を伝え、そのことに能力を発揮すること、皆さんの前で自分を表現することの喜びもある。
そのように自分が大切にしていることを確認しながら講義することで、ぶれずに喜びをもって進めていくことができる。これは自分自身に用いる共感的コミュニケーションでもある。
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