◎今日のテキスト
新橋を渡る時、発車を知らせる二番目の鈴《ベル》が、霧とまではいえない九月の朝の、煙《けむ》った空気に包まれて聞こえて来た。葉子《ようこ》は平気でそれを聞いたが、車夫は宙を飛んだ。そして車が、鶴屋《つるや》という町のかどの宿屋を曲がって、いつでも人馬の群がるあの共同井戸のあたりを駆けぬける時、停車場の入り口の大戸をしめようとする駅夫と争いながら、八分《ぶ》がたしまりかかった戸の所に突っ立ってこっちを見まもっている青年の姿を見た。
――有島武郎『或る女』より
◎介護予防という考え方を身につける(三)
人である以上、かならずいつかはこの世とお別れするときがやってくる。その瞬間までどのようにすごしたいか。
どんな人もその瞬間まで元気でありたいと願っているだろう。もちろん私もそうだ。そのために、いまのうちから老齢になっても元気でいられる「術(スキル)」を身につけておきたいと思う。そのスキルはそれほど難しいものではない。たとえば音読療法がそのスキルのひとつとして非常に有効であることは確かだが、問題はそれを毎日つづけることができるかどうか、ということだ。
自分が死ぬまで元気でいたい、というその必要性をどれだけ強く、深く思えるかということが、毎日の介護予防の習慣を自分がおこなえるかということにつながる。
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