2012年10月11日木曜日
10月11日
◎今日のテキスト
眼のさめたままぼんやりと船室の天井を眺めていると、船は大分揺れている。おもむろに傾いては、またおもむろに立ち直る。耳を澄ましても波も風も聞えない。すぐ隣に寢ている母子《おやこ》づれの女客が、疲れはてた声でまた折々吐いているだけだ。半身を起して見すと、室内の人はことごとくひっそりと横になって誰一人煙草を吸ってる者もない。
船室を出て甲板に登ってみると、こまかい雨が降っていた。沖一帯はほの白い光を包んだ雲に閉されて、左手にはツイ眼近に切りそいだ様な断崖が迫り、浪が白々と上っている。午前の八時か九時、しっとりとした大気のなかに身に浸む様な鮮さが漂うて自ずから眼も心も冴えて来る。
――若山牧水「熊野奈智山」より
◎福井県立病院でピアノを弾いてきた
あとで聞いてびっくりしたのだが、福井県立病院は1000床近くの巨大病院だった。
エントランスホールにグランドピアノがあって、そこでは時々音楽コンサートが開かれている。たまたま友人の医者が勤務していたので、取り次いでもらってそこでピアノコンサートをやらせてもらった。
入院患者さんをはじめ、わざわざ聴きに来てくれた方、たまたま通りかかった方、職員の方など、思っていたよりずっとたくさんの方に聴いていただくことができた。喜んでもらえたのは、そのまんま私の喜びでもある。
職員の方からも皆さんからも、またやってねといわれたことが、先の励みになっている。
音楽も音読も、音は人の心と身体に直接触れることができる。
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