◎今日のテキスト
夏休みの十五日の農場実習の間に、私《わたくし》どもがイギリス海岸とあだ名をつけて、二日か三日ごと、仕事が一きりつくたびに、よく遊びに行った処《ところ》がありました。
それは本とうは海岸ではなくて、いかにも海岸の風をした川の岸です。北上川の西岸でした。東の仙人峠から、遠野を通り土沢を過ぎ、北上山地を横截《よこぎ》って来る冷たい猿ヶ石《さるがいし》川の、北上川への落合《おちあい》から、少し下流の西岸でした。
——宮沢賢治「イギリス海岸」より
◎嵐の夜に
私がこれを書いているのは、2012年9月30日の午後10時半すぎである。台風が直撃コースをたどって近づいていて、とくに風がゴーゴーと吹き荒れはじめている。
風は息をついてときに強まり、ときに弱くなる。まさに生きている感じがする。
そんななか、生きている私は、嵐をわくわくするような、不安なような、いろいろな感情が入りまじった気持ちですごしている。
自然の力や風景と直面するとき、人はマインドフルになり、「いまここ」を意識する。
0 件のコメント:
コメントを投稿