2012年10月10日水曜日

10月10日


◎今日のテキスト

 河の水音は家の後ろに高まっている。雨は朝から一日窓に降り注いでいる。窓ガラスの亀裂《ひび》のはいった片隅には、水の滴《したた》りが流れている。昼間の黄ばんだ明るみが消えていって、室内はなま温くどんよりとしている。
 赤児《あかご》は揺籃《ゆりかご》の中でうごめいている。老人は戸口に木靴を脱ぎすててはいって来たが、歩く拍子に床板《ゆかいた》が軋《きし》ったので、赤児はむずかり出す。母親は寝台の外に身をのり出して、それを賺《すか》そうとする。祖父は赤児が夜の暗がりを恐《こわ》がるといけないと思って、手探りでランプをつける。その光で、祖父ジャン・ミシェル老人の赤ら顔や、硬い白髯《しろひげ》や、気むずかしい様子や、鋭い眼付などが、照らし出される。
 ——ロマン・ロラン『ジャン・クリストフ』(豊島与志雄・訳)より

◎ウジャイ呼吸

 ヨガの呼吸法のひとつに「ウジャイ呼吸」というものがある。これは声帯のすきまである「声門」を意識的に調整する呼吸法だ。
 声門を完全に閉じてしまうと呼吸はとまるし、閉じた声門のあいだを空気を押し通せば振動が生まれてそれは声となる。声門をわずかに開いてそこに空気を通せば、狭い場所を通る空気には速度が生まれ、また声帯付近に乱気流が生じて空気がより粘膜に触れやすくなり、熱が粘膜から空気に移る。
 狭い声門を通る空気は「コォー」というような音を立てる。この音を意識して呼吸をすると、音読療法でも推奨している細く長いゆっくりした呼吸になる。

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