◎今日のテキスト
駅を出て二十分ほども雑木林の中を歩くともう病院の生垣《いけがき》が見え始めるが、それでもその間には谷のように低まった処や、小高い山のだらだら坂などがあって人家らしいものは一軒も見当たらなかった。東京からわずか二十マイルそこそこの処であるが、奥山へはいったような静けさと、人里離れた気配があった。
梅雨期にはいるちょっと前で、トランクを提《さ》げて歩いている尾田は、十分もたたぬ間にはやじっとり肌が汗ばんで来るのを覚えた。ずいぶん辺鄙《へんぴ》な処なんだなあと思いながら、人気の無いのを幸い、今まで眼深にかぶっていた帽子をずり上げて、木立を透かして遠くを眺《なが》めた。見渡す限り青葉で覆われた武蔵野で、その中にぽつんぽつんと蹲《うずくま》っている藁屋根《わらやね》が何となく原始的な寂蓼《せきりょう》を忍ばせていた。
——北條民雄『いのちの初夜』より
◎ボイスセラピストの資格
2級ボイスセラピストの資格は、家族や友人など、身近な人に気楽に呼吸法や発声法を教えてあげられるスキルだが、1級だとグループワークができるようになる。
学校や職場、老人ホームや趣味の集まり、あるいは被災地でのボランティア活動など、さまざまな活躍の場面がある。
実際にすでに仕事として活動をはじめているボイスセラピストが何人かいる。
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