2012年7月18日水曜日

7月18日

◎今日のテキスト

 空気は我らの周りに重い。旧い西欧は、毒された重苦しい雰囲気の中で麻痺する。偉大さの無い物質主義が人々の考えにのしかかり、諸政府と諸個人との行為を束縛する。世界が、その分別臭くてさもしい利己主義に浸って窒息して死にかかっている。世界の息がつまる。――もう一度窓を開けよう。広い大気を流れ込ませよう。英雄たちの息吹を吸おうではないか。
 ——ロマン・ロラン『ベートーヴェンの生涯』(訳・片山敏彦)より

◎伝達と表現

 時々、いや、しばしば、私のところに朗読を学びたいといってやってくる人のなかで、「自分が好きな作品のすばらしさを人に伝えたくて」朗読をやりたいという人がいる。
 感銘を受けた文章や文学作品に接したとき、だれもがそのことを伝えたいと思う。だったら、その本を渡せばいいのではないか。
 感銘を受けた作品を「だれかに朗読したい」と思ったとき、すでにその動機のなかには「自分を伝えたい」という要素がはいっている。自分がその作品をいかに読んだのか、いかに読むのか、自分の声を使ってどう表現するのか。
 なにか作品を「朗読したい」と思ったとき、それはすでに作品の「伝達」ではなく、自分を「表現」する欲求に突き動かされていることに気づいていない人が多いのには驚く。

1 件のコメント:

  1. どんな感じなんだろうなぁ‥作品の輝きが自分の全てを揺さぶって突き上げる様に放たれる‥感じかなぁ‥生きてる自分を通して三者が一体になるのがとても嬉しいのかなぁ‥これが私にとって自分を表現する事なのかしら…これからもっと発見できるかなぁ…

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