◎今日のテキスト
時こそ今は水枝《みづえ》さす、こぬれに花の顫《ふる》ふころ。
花は薫じて追風に、不断の香の炉に似たり。
匂も音も夕空に、とうとうたらり、とうたらり、
ワルツの舞の哀れさよ、疲れ倦《う》みたる眩暈《くるめき》よ。
花は薫じて追風に、不断の香の炉に似たり。
痍《きず》に悩める胸もどき、ヴィオロン楽《がく》の清掻《すががき》や、
ワルツの舞の哀れさよ、疲れ倦みたる眩暈《くるめき》よ、
神輿《みこし》の台をさながらの雲悲みて艶《えん》だちぬ。
——上田敏『海潮音』のシャルル・ボドレエル「薄暮の曲」より
◎夜は千の目を持つ
これはジャズでよく演奏されるスタンダードナンバーとしても有名ですが、もともとは古いサスペンス映画の題名であり、元は小説である。原題は「The Night Has A Thousand Eyes」。
夜闇にまぎれて悪いことをしようとしても、千の目が見ているよ、といった、日本の故事でいえば「壁に耳あり、障子に目あり」みたいなニュアンスの成句らしいが、この言葉にはつづきがある。「昼はただひとつ」という。
私は少年時代をSF小説にどっぷりつかってすごしたSFファンなので、映画や音楽よりも、むしろ宇宙をイメージしてしまう。
もうすぐペルセウス座流星群の時期がやってくる。星を見て「いまここ」を意識するのはわくわくする体験だ。
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