2012年9月12日水曜日

9月12日


◎今日のテキスト

 一体子供は賞《ほ》められる方へ行きたい者である。小さい奴は銭勘定で動くものでない。日本人は賞められるのを最も重く思うことは、日本古来の書物を読んでも分る。日本人と西洋人との区別はその点に在るので、日本人は悪くいえばオダテの利く人間である、良くいえば非常に名誉心の強い人間である。譬えば日本の子供に対しては、このコップを見せて、「お前がこのコップを弄《もてあそ》んではならぬ、もし過《あやま》って壊したら、人に笑われるぞ」というのであるが、西洋の子供に対してはそうでない。七、八歳あるいは十歳くらいの子供に対して、「このコップは一個二十銭だ、もしもお前がこのコップを弄んで壊したら、二十銭を償わねばならぬ、損だぞ」というと、その子供はそうかなと思って手を触れない。日本の子供には損得の問題をいっても、中々頭に這入《はい》るものでない。
 ——新渡戸稲造「教育の目的」より

◎報酬主義の危険性(一)

 だれかに用事をしてもらおうと思って、「千円でこれをやってくれない?」と頼むと、その人は喜んで千円を受け取ってその用事を片付けてくれる。次の機会におなじ用事を頼もうと思ったら、やはり千円をあげなければその人は用事をしてくれない。
 最初から「お礼はできないんだけど、あなたにこれをやってもらえると私はとても助かる」といって用事を頼むと、やはりおなじようにやってくれるばかりか、それ以降も報酬がなくてもつづけて用事をやってくれるかもしれない。
 人はだれかのためになにかするとき、本来報酬が目当てではないのだ、ということをまず理解しておく必要がある。

0 件のコメント:

コメントを投稿