2012年3月4日日曜日

3月4日

◎今日のテキスト

 木曾路《きそじ》はすべて山の中である。あるところは岨《そば》づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曾川の岸であり、あるところは山の尾をめぐる谷の入り口である。一筋の街道はこの深い森林地帯を貫いていた。
 東ざかいの桜沢から、西の十曲峠《じっきょくとうげ》まで、木曾十一宿《しゅく》はこの街道に添うて、二十二里余にわたる長い谿谷《けいこく》の間に散在していた。道路の位置も幾たびか改まったもので、古道はいつのまにか深い山間《やまあい》に埋《うず》もれた。名高い桟《かけはし》も、蔦《つた》のかずらを頼みにしたような危い場処ではなくなって、徳川時代の末にはすでに渡ることのできる橋であった。新規に新規にとできた道はだんだん谷の下の方の位置へと降《くだ》って来た。道の狭いところには、木を伐《き》って並べ、藤《ふじ》づるでからめ、それで街道の狭いのを補った。長い間にこの木曾路に起こって来た変化は、いくらかずつでも嶮岨《けんそ》な山坂の多いところを歩きよくした。そのかわり、大雨ごとにやって来る河水の氾濫が旅行を困難にする。そのたびに旅人は最寄り最寄りの宿場に逗留《とうりゅう》して、道路の開通を待つこともめずらしくない。
 ——島崎藤村『夜明け前』より

◎マインドフルネスについて「呼吸からはじめる(3)」

 呼吸を微細に観察することで雑念を追い払い「いまここ」の意識を強めることができるが、さらに呼吸から身体全体へと「気づき」を広げていくことができる。
 呼吸している自分の身体の体重が乗っている両足の裏に意識を向け、地面あるいは床に押しつけられていることにも注意を向ける。呼吸している自分の身体が足の裏と頭のてっぺんの間に存在していることを感じる。さらにその足の裏が接している平面の広がりを感じたり、身体全体を包みこんでいる周辺の環境やより大きな空間にも意識を広げていくようにする。
 呼吸が世界とつながっている感覚を持てることもある。

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