2012年3月27日火曜日

3月27日

◎今日のテキスト

 恥の多い生涯を送って来ました。
 自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。自分は東北の田舎に生れましたので、汽車をはじめて見たのは、よほど大きくなってからでした。自分は停車場のブリッジを、上って、降りて、そうしてそれが線路をまたぎ越えるために造られたものだという事には全然気づかず、ただそれは停車場の構内を外国の遊戯場みたいに、複雑に楽しく、ハイカラにするためにのみ、設備せられてあるものだとばかり思っていました。しかも、かなり永い間そう思っていたのです。ブリッジの上ったり降りたりは、自分にはむしろ、ずいぶん垢抜《あかぬ》けのした遊戯で、それは鉄道のサーヴィスの中でも、最も気のきいたサーヴィスの一つだと思っていたのですが、のちにそれはただ旅客が線路をまたぎ越えるための頗る実利的な階段に過ぎないのを発見して、にわかに興が覚めました。
 ——太宰治『人間失格』より

◎音読日めくりを持ち歩く

 気分が落ちこんだとき、もやもやしているときには、まずは呼吸。そしてマインドフルネスを心がけ、反芻思考を断ち切ることが有効であることはすでに書いた。
 呼吸法をおこなってもなかなか雑念が追い払えないという人は、気にいった文章を読むといい。できれば声に出して。
 私の知り合いの何人かは、この「音読日めくり」をプリントアウトして持ち歩いている。いつでも読めるように。気にいった文章だけ持ち歩けばいいし、手帳などに書き写しておいてもいい。頭のなかにいれておいて、いつでも暗唱できるようにしておくのもいい。

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