◎今日のテキスト
四里の道は長かった。その間に青縞《あおじま》の市《いち》のたつ羽生《はにゅう》の町があった。田圃《たんぼ》にはげんげが咲き、豪家《ごうか》の垣からは八重桜が散りこぼれた。赤い蹴出《けだ》しを出した田舎の姐《ねえ》さんがおりおり通った。
羽生からは車に乗った。母親が徹夜して縫ってくれた木綿の三紋《みつもん》の羽織に新調のメリンスの兵児帯《へこおび》、車夫は色のあせた毛布《けっとう》を袴《はかま》の上にかけて、梶棒《かじぼう》を上げた。なんとなく胸がおどった。
——田山花袋『田舎教師』より
◎マインドフルネスについて「呼吸からはじめる(1)」
自分が「いまここ」にいて、自分とまわりのことにフルに気づいている状態になるには、呼吸の観察からはじめるのがやりやすい。これはヨガや座禅でも推奨されている方法だ。
じっと座っていても、立って静止していても、人間の身体のなかは動いている。心臓が脈打ち、血流が駆け巡っている。そしてそれよりはっきり感じとれる動きとしては、呼吸による動きがある。
胸郭が動き、肺がふくらんだり縮んだりしている。横隔膜や腹部も動いている。それによって空気の流れが生まれ、鼻腔を出入りしている。まずその部分に微細な観察を向けていく。
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