2012年3月21日水曜日

3月21日

◎今日のテキスト

 名も知らない草に咲く、一茎の花は、無条件に美しいものである。日の光りに照らされて、鮮紅に、心臓のごとく戦《おのの》くのを見ても、また微風に吹かれて、羞《はじ》らうごとく揺らぐのを見ても、かぎりない、美しさがその中に見出されるであろう。
 ——小川未明「名もなき草」より

◎黙読、音読、静読

 文章を読む方法にはいくつかある。
 黙って活字を読む方法。その場合には、文字情報を音声変換せずに一瞬にして意味だけとらえていく一種の「速読」があるが、ここではそれはおすすめしない。黙読するにせよ、頭のなかで音声に変換して、「言葉の音」として味わうことをおすすめする。
 もちろん、できれば声に出して読めるといい。音読してもいい環境があれば、許される音量で声に出して読みあげる。これははっきりと身体運動である。身体運動と読書が結びついたとき、そこにマインドフルネスが生まれる。
 声を出して読むことが難しい環境——たとえば満員電車のなか——などでは、口のなかでぼそぼそ読むということもできる。無声のまま呼吸で読む。まわりには聴こえないが、自分の聴覚には骨伝導で聴こえる。
 とにかく、文字面をなぞる「意味読書」と、なんらかの音声変換による「音読」とでは、体験の質がまったく異なる。

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