2012年3月3日土曜日

3月3日

◎今日のテキスト

 半年のうちに世相は変った。醜《しこ》の御楯《みたて》といでたつ我は。大君のへにこそ死なめかへりみはせじ。若者達は花と散ったが、同じ彼等が生き残って闇屋《やみや》となる。ももとせの命ねがはじいつの日か御楯とゆかん君とちぎりて。けなげな心情で男を送った女達も半年の月日のうちに夫君の位牌《いはい》にぬかずくことも事務的になるばかりであろうし、やがて新たな面影を胸に宿すのも遠い日のことではない。人間が変ったのではない。人間は元来そういうものであり、変ったのは世相の上皮だけのことだ。
 ——坂口安吾「堕落論」より

◎マインドフルネスについて「呼吸からはじめる(2)」

 鼻腔を出入りする呼吸を微細に観察するには、まず鼻孔に神経を集中する。鼻孔の感覚はかなり繊細なもので、息を吐くときの暖かい空気が出ていく感覚、息を吸うときの(体温より)冷たい空気がはいってくる感覚を、注意深くとらえられるようにする。
 それができれば、その意識を鼻腔とその奥へ、気道へ、そして肺の動きへと広げていくことができるだろう。
 肺がゆったりと動き、呼吸が生まれている。その肺を膨張させたり収縮させたりしている筋肉や骨格の動きも自覚できるようになれば、マインドフル呼吸になる。そのとき自分がなにをかんがえているか思い出してみよう。おそらく呼吸と自分の身体に意識が向いてほかのことはなにもかんがえていないはずだ。いわゆる「雑念」から遠ざかった状態が起こる。

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