親《おや》という二字と無筆の親は言い。この川柳《せんりゅう》は、あわれである。
「どこへ行って、何をするにしても、親という二字だけは忘れないでくれよ。」
「チャンや。親という字は一字だよ。」
「うんまあ、仮りに一字が三字であってもさ。」
この教訓は、駄目である。
しかし私は、いま、ここで柳多留《やなぎだる》の解説を試みようとしているのではない。実は、こないだ或《あ》る無筆の親に逢《あ》い、こんな川柳などを、ふっと思い出したというだけの事なのである。
——太宰治「親という二字」より
◎日めくりスケッチ展
いま、下北沢のカフェ〈Com.Cafe 音倉〉というところで、この「音読日めくり」に毎日掲載している小さなスケッチの展示をやっているが、その会期が二週間延長になった。
額装して展示してあるスケッチは販売しているのだが、幸い絵を買ってくれる人がいたり、プリントしたポストカードを買ってくれる人もいるらしい。
つたないものでも自分が描いたものがだれかに気にいられ、もらわれていくのはうれしいことだ。
会期は9月9日(日)までなので、ご都合のつく方はいらしてください。
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