2012年8月16日木曜日

8月16日


◎今日のテキスト

 金網の張ってある窓枠に両手がかゝって――その指先きに力が入ったと思うと、男の顔が窓に浮かんできた。
 昼になる少し前だった。「H・S製罐《せいかん》工場」では、五ラインの錻刀切断機《スリッター》、胴付機《ボデイ・マシン》、縁曲機《フレンジャー》、罐巻締機《キャンコ・シーマー》、漏気試験機《エアー・テスター》がコンクリートで固めた床を震わしながら、耳をろうする音響をトタン張りの天井に反響させていた。鉄骨の梁《はり》を渡っているシャフトの滑車《プレー》の各機械を結びつけている幾条ものベルトが、色々な角度に空間を切りながら、ヒタ、ヒタ、ヒタ、タ、タ、タ……と、きまった調子でたるみながら廻転していた。むせッぽい小暗い工場の中をコンヴェイヤーに乗って、機械から機械へ移っていく空罐詰が、それだけ鋭く光った。――女工たちは機械の音に逆った大きな声で唄をうたっていた。で、窓は知らずにいた。
 ——小林多喜二『工場細胞』より

◎運動しにくい夏は呼吸法を(三)

 呼吸は実はけっこうな運動で、とくに意識的に呼吸法をおこなった場合、すぐに身体がぽかぽかしてうっすらと汗をかきはじめることでも、それがわかる。
 息を吸うときには身体の表層にある筋肉を多く使い、息を吐くときには身体の深層にある筋肉を多く使う。とくに息を吐くときは、肋骨を下にさげて胸郭をせばめ、横隔膜を上に押し上げるために、内腹斜筋、外腹斜筋、腹横筋といった深層筋が動く。
 深層筋はいわゆるコアマッスルというもので、ここを強化することで腰痛予防や自律神経の調子を整えること、疲れにくい身体を作るなど、さまざなま効果が期待できる。
 暑くて運動する気になれなかった日は、せめて呼吸法で筋力強化をはかってみよう。

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