2012年8月20日月曜日

8月20日


◎今日のテキスト

 私は蒼空を見た。蒼空は私に泌みた。私は瑠璃色の波に噎ぶ。私は蒼空の中を泳いだ。そして私は、もはや透明な波でしかなかった。私は磯の音を脊髄にきいた。単調なリズムは、其処から、鈍い蠕動を空へ撒いた。
 私は窶れていた。夏の太陽は狂暴な奔流で鋭く私を刺し貫いた。その度に私の身体は、だらしなく砂の中へ舞い落ちる靄のようであった。私は、私の持つ抵抗力を、もはや意識することがなかった。そして私は、強烈な熱である光の奔流を、私の胎内に、それが私の肉であるように感じていた。
 白い燈台があった。三角のシャッポを被っていた。ピカピカの海へ白日の夢を流していた。古い思い出の匂がした。佐渡通いの船が一塊の煙を空へ落した。海岸には高い砂丘がつづいていた。冬にシベリヤの風を防ぐために、砂丘の腹は茱萸《グミ》藪だった。日盛りに、螽《きりぎりす》が酔いどれていた。頂上から町の方へは、蝉の鳴き泌む松林が頭をゆすぶって流れた。私は茱萸藪の中に佇んでいた。
 ——坂口安吾「ふるさとに寄する讃歌」より

◎体重の抑制に呼吸法は有効なのか

 最近、ロングブレス・ダイエットなどというものが話題になっていて、呼吸法で体重のコントロールをすることが注目を集めている。それははたして有効なのだろうか。
 音読療法でおこなう呼吸法は、話題のロングブレス・ダイエットによく似た部分もあるけれど、ダイエット効果があるとはいいたくない。それは音読療法の真性さを損ないような気がする。
 もっとも、呼吸法はたしかに呼吸筋を含む深層筋を鍛えることは可能で、その結果基礎代謝を底上げすることはあるうるかもしれない。
 ともあれ、音読療法では「やせること」を目的とするのではなく「健康であること」を目的としている。

0 件のコメント:

コメントを投稿