2012年5月24日木曜日

5月24日

◎今日のテキスト

 桜の花が咲くと人々は酒をぶらさげたり団子《だんご》をたべて花の下を歩いて絶景だの春ランマンだのと浮かれて陽気になりますが、これは嘘です。なぜ嘘かと申しますと、桜の花の下へ人がより集って酔っ払ってゲロを吐いて喧嘩《けんか》して、これは江戸時代からの話で、大昔は桜の花の下は怖しいと思っても、絶景だなどとは誰も思いませんでした。近頃は桜の花の下といえば人間がより集って酒をのんで喧嘩していますから陽気でにぎやかだと思いこんでいますが、桜の花の下から人間を取り去ると怖ろしい景色になりますので、能にも、さる母親が愛児を人さらいにさらわれて子供を探して発狂して桜の花の満開の林の下へ来かかり見渡す花びらの陰に子供の幻を描いて狂い死して花びらに埋まってしまう(このところ小生の蛇足《だそく》)という話もあり、桜の林の花の下に人の姿がなければ怖しいばかりです。
 ——坂口安吾「桜の森の満開の下」より

◎リズム感の話(一)

 音楽のリズムと音読のリズムはもちろん違うが、どちらもリズムを感じる表現であることには同意していただけるだろう。そして音楽にもさまざまなリズムがある。
 現代の大衆音楽は「ノリやすい」という理由から、一定のビートを刻む正確なリズムが多い。大衆音楽でもやや古いジャズやブルース、ラテン音楽などになると、一定のビートも揺れ動いていたりする。
 さらにさかのぼって、ミュージカルや映画音楽、そしてそれらの元になったクラシック音楽は、さらに揺れ動くリズムが使われている。
 音読のリズムはクラシック音楽のように揺れ動くリズムに近いかもしれない。

0 件のコメント:

コメントを投稿