◎今日のテキスト
山手線の朝の七時二十分の上り汽車が、代々木の電車停留場の崖下を地響きさせて通るころ、千駄谷の田畝《たんぼ》をてくてくと歩いていく男がある。この男の通らぬことはいかな日にもないので、雨の日には泥濘《でいねい》の深い田畝道《たんぼみち》に古い長靴を引きずっていくし、風の吹く朝には帽子を阿弥陀にかぶって塵埃《じんあい》を避けるようにして通るし、沿道の家々の人は、遠くからその姿を見知って、もうあの人が通ったから、あなたお役所が遅くなりますなどと春眠いぎたなき主人を揺り起こす軍人の細君もあるくらいだ。
——田山花袋「少女病」より
◎不機嫌な顔は「話聞いて」のメッセージ
不機嫌な顔をしている人がいるとする。
その人は実は、自分が不機嫌であるということを精一杯、まわりの人に表現しているのだ。つまり、自分が不機嫌であるというメッセージを発信している。
そのニーズはなんだろう。
かまってもらいたい、かもしれない。自分のことを尊重してくれ、かもしれない。自分の大変さを理解してもらいたい、かもしれない。
仕事から帰ってきた一家の主人が不機嫌であるのも、学校から帰ってきた子どもが不機嫌であるのも、ひょっとして「自分を見て」「自分の大変さを理解して」「自分の話を聞いてほしい」という強烈なメッセージなのかもしれない。
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