2012年6月18日月曜日

6月18日

◎今日のテキスト

 息が切れたから、立ち留まって仰向くと、火の粉《こ》がもう頭の上を通る。霜《しも》を置く空の澄み切って深い中に、数を尽くして飛んで来ては卒然《そつぜん》と消えてしまう。かと思うと、すぐあとから鮮《あざやか》なやつが、一面に吹かれながら、追《おっ》かけながら、ちらちらしながら、熾《さかん》にあらわれる。そうして不意に消えて行く。その飛んでくる方角を見ると、大きな噴水を集めたように、根が一本になって、隙間《すきま》なく寒い空を染めている。二三間先に大きな寺がある。長い石段の途中に太い樅《もみ》が静かな枝を夜《よ》に張って、土手から高く聳《そび》えている。火はその後《うしろ》から起る。黒い幹と動かぬ枝をことさらに残して、余る所は真赤《まっか》である。火元はこの高い土手の上に違《ちがい》ない。もう一町ほど行って左へ坂を上《あが》れば、現場《げんば》へ出られる。
 ——夏目漱石『永日小品』「火事」より

◎いろいろなセラピー

 世の中にはさまざまなセラピー(民間療法)がある。
 もちろん音読療法もそのひとつなのだが、有名なものでは音楽療法(ミュージックセラピー)がある。精神科治療の現場で古くから使われていてよく知られている箱庭療法、といったものもある。それに近いものでは、フラワーセラピーもある。つまり自分でなにかを作ったり表現したりすることで治療効果をねらうものだ。
 アロマセラピー、森林セラピー、カラーセラピー、あと具体的な内容は私もわからないがタスクセラピー、メークセラピー、書セラピー、禁欲セラピー、股関節セラピー、モーツアルトセラピーなんてものまである。

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