2012年6月16日土曜日

6月16日

◎今日のテキスト

 趙の邯鄲の都に住む紀昌といふ男が、天下第一の弓の名人にならうと志を立てた。己の師と頼むべき人物を物色するに、当今弓矢をとっては、名手・飛衞に及ぶ者があろうとは思われぬ。百歩を隔てて柳葉を射るに百発百中するという達人だそうである。紀昌は遙々飛衞をたずねてその門に入った。
 飛衞は新入の門人に、まず瞬きせざることを学べと命じた。紀昌は家に歸り、妻の機織臺の下に潛り込んで、そこに仰向けにひっくり返った。眼とすれすれに機躡《まねき》が忙しく上下往来するのをじっと瞬かずに見詰めていようといふ工夫である。理由を知らない妻は大に驚いた。第一、妙な姿勢を妙な角度から良人に覗かれては困るという。いやがる妻を紀昌は叱りつけて、無理に機を織り続けさせた。
 ——中島敦「名人伝」より

◎子どもたちは元気だった

 墨田区の小学校で音読授業をしてきた。
 二年生のふたクラスでそれぞれおこなってきたのだが、ひとつは大変元気で、奔放で、ある意味収拾がつかなくなって困るほどだった。もうひとクラスはおとなしく、統制が取れていて、こちらの話をきちんと聞くことができる。
 さて、このどちらがよいだろう。
 もちろん大人の都合では後者のほうがよいに決まっている。進行するのは楽だ。しかし、はたしてそれでいいのだろうか。
 私は収拾がつかなくなって、大人が困り果ててしまうような前者のような子どもたちのほうが好きだ、と感じていた。

2 件のコメント:

  1. 読めない漢字をどう読むのか調べないでみました。
    適当に当て字をして読んでみたら、これはこれで、自分ひとりの音読タイムにはいいかもしれません。当て字を探しているときはそれに集中できますね!(^^)!

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  2. 読めない漢字を自分の想像で補って読んでみるというのは、おもしろいかもしれませんね。
    読める字も自分で違う読みに入れ替えちゃうというのもいいかもね(笑)。作者には申し訳ないけど。

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