2012年12月25日火曜日

12月25日


◎今日のテキスト

 隣りの紺屋の婆様から、ぎんはこんな昔語りをきいた。
 或る山の中に男が一人小屋がけをして住んでいた。働いても働いても食うに事かく有様で、おのれの行末を考えては心細がっていた。或る晩大風があってほうぼうの大木が倒され畠の粟や稗がみんな吹きこぼれて、あっちこっちで助けてけろ助けてけろという叫び声がする。男は行きつけの旦那衆の手伝いをして家に帰って寝たが、夜中にどこからか助けてけろ助けてけろというかぼそい叫び声がきこえる。はて何処だべと思いながら夜を明かした。朝になって山へ柴刈に行ったが、まだゆうべの助けてけろ助けてけろという声がするから、だんだん尋ねて行くと、きのうの大風で倒れた古木の洞に住んでいた鴻の鳥が、木の間に体がはさまってどうすることも出来ずにキイキイ鳴いているのであった。
 ――矢田津世子「鴻ノ巣女房」より

◎ゆっくりと歩くことで「いまここ」を意識する

 瞑想法のひとつに「歩く瞑想」というものがあって、それにはいろいろなやり方があったり、厳密なやり方を指導している方もいるようだが、むずかしくかんがえなくてもだれでも手軽に「ゆっくり歩く」ことに注意を向けることで「いまここ」のプレゼンスを意識できるようになる。
 通勤途中でも買物に行くときでも、あるいは散歩のときでもいいのだが、とてもゆっくりと歩いてみる。どのくらいゆっくりかというと、自分がいま右足を出している、次に左足を出している、足の裏が着地した、足の裏が地面から離れた、つま先が前方に移動した、という「自覚」を言葉にしなくてもいいからはっきりと持てるくらいのスローテンポで歩いてみる。そのときに、自分がいろいろな思考や判断を持たずに、ただ自分が歩いていることだけに集中して歩く動きを感じられればいい。

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