◎今日のテキスト
村木博士は、いろいろな動物試験で、人工生殖の実験が成功したことを報告してから、たった今小使がもって来た二匹のモルモットを入れた檻を卓の上へとり出した。
「この白い方は、私が村木液の中で培養したモルモットです。黒の勝った方は、普通の親から生れたモルモットです。どちらも生後三週間のものですが、その発育状態は少しの相違も見られません。どうぞ、これをまわしてよく御覧下さい」
こう言って博士はモルモットの檻を一番前列に聴いている男に渡した。二匹のモルモットは檻の中で小さくなっていた。檻は聴衆の間へ次から次へとまわされていった。三百人あまりの男女の聴衆は、妙な環境の中で生育したこの小さい動物を不思議そうに観察しながら、近代科学の驚くべき奇蹟に驚歎した。
――平林初之輔「人造人間」より
◎音圧の話(一)
音楽用語だが「音圧」ということばがある。
音は空気の振動によって伝わるものであり、それはパスカルという圧力単位で強さをあらわすことができる。一般に音圧が高ければ音は大きいということになる。
ただし、人間の耳はちょっとした癖を持っていて、音圧の感じ方が機械のように客観的・平均的というわけではない。
とても静かなところで音が鳴れば、音圧が高いように感じるし、また音圧の高い/高いの変動が大きな音源は、聴きにくいと感じる。音楽でもクラシック音楽などは音圧レベルの変動が大きい。
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