2012年12月11日火曜日

12月11日


◎今日のテキスト

 史朗は今度一年生になりました。まだ学校へ行く道が憶えられないので、女中が連れて行きます。女中は史朗の妹を背に負って行くのでした。妹は美しい毬《まり》を持っています。その毬は姉が東京から土産に買って来たものでした。毬には桃の花の咲いた山の絵が描いてあります。
 さて、ある日、先生が「今日はこれから山へのぼりましょう」と申しました。皆はそれでワイワイと喜びながら、学校の門を出ました。山は学校のすぐ側にあったので、すぐ登れました。草原にちらかって遊びました。桃の花が咲いていました。史朗も妹も、みんなその辺で遊びました。暫くして山を下りました。史朗は女中に連れられて家へ戻りました。
 戻って気がつくと、妹の毬が無くなっているのでした。どうしたのだろう、どこへやったのかしらと大探ししてもありません。毬は、山へ連れて行かれたので急に元気になって勝手にはね廻って、ころころ、転んで、そのまま、「この山は僕の絵と似てるな」と云って、ねころんでしまったのでしょうか。
 ――原民喜「山へ登った毬」


◎あと六十三日

 また冬がめぐってきた。数日前からちょうど北陸の実家に帰省しているのだが、冬型の気圧配置と寒波のせいでかなり積雪があった。とくに実家は山間部にあるので、五〇センチは積もっただろうか。
 この「音読日めくり」を始めたのも冬で、今年の二月十三日が最初の回だった。「日めくり」なので一年分をとにかく作ろうと決意して、毎日書きつづけた。
 それもあと六十三日を残すばかりとなった。

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