◎今日のテキスト
古い話である。僕は偶然それが明治十三年の出来事だと云うことを記憶している。どうして年をはっきり覚えているかと云うと、その頃僕は東京大学の鉄門の真向いにあった、上条《かみじょう》と云う下宿屋に、この話の主人公と壁一つ隔てた隣同士になって住んでいたからである。その上条が明治十四年に自火で焼けた時、僕も焼け出された一人《いちにん》であった。その火事のあった前年の出来事だと云うことを、僕は覚えているからである。
――森鴎外『雁』より
◎苦手意識
自分が「〜が苦手」と思うことは、ときに思いこみにすぎないことがある。一度あるいは数回の失敗体験によって、それが「苦手だ」というふうに思いこんでしまって、またそれをしようとするときに不必要に緊張したり、身体が固まったりして、また失敗に結びついてさらに苦手意識を深めてしまう。
思いこみはセルフジャッジメントなので、自分に対するジャッジを捨てられたとき、苦手意識がフッとなくなることがある。すると身体から力が抜け、緊張もなくなり、自分本来のパフォーマンスができるようになって、苦手だと思っていたことが簡単にできてしまったりする。
0 件のコメント:
コメントを投稿