2012年4月29日日曜日

4月29日

◎今日のテキスト

 お前たちが大きくなって、一人前の人間に育ち上った時、――その時までお前たちのパパは生きているかいないか、それは分らない事だが――父の書き残したものを繰拡《くりひろ》げて見る機会があるだろうと思う。その時この小さな書き物もお前たちの眼の前に現われ出るだろう。時はどんどん移って行く。お前たちの父なる私がその時お前たちにどう映《うつ》るか、それは想像も出来ない事だ。恐らく私が今ここで、過ぎ去ろうとする時代を嗤《わら》い憐《あわ》れんでいるように、お前たちも私の古臭い心持を嗤い憐れむのかも知れない。私はお前たちの為《た》めにそうあらんことを祈っている。
 ——有島武郎「小さき者へ」より

◎身体の構えを意識する

 人はさまざまな身体の「構え」を持っていて、そのつど無意識にそれを選びとっている。
 たとえば上司の前で仕事の報告をするとき。たとえば部下たちに向かって訓示をたれるとき。たとえばひさしぶりに友人に会ったとき。雨上がりの森のなかで雫のしたたる樹の下にたたずんだとき。夏の海辺で陽光を反射しながら打ち寄せる波を、デッキチェアにねそべってながめるとき。
 身体のなかのさまざまな部分が微細に変化して、その「構え」は作られる。
 瞬間瞬間、自分がどのような身体の「構え」を選びとっているのか、そのことに意識を向けてみるのはおもしろい。自分自身のありよう(身体性ともいう)に気づく瞬間だ。

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