2012年4月10日火曜日

4月10日

◎今日のテキスト

 まっくろけの猫が二疋、
 なやましいよるの家根のうえで、
 ぴんとたてた尻尾のさきから、
 糸のようなみかづきがかすんでいる。
『おわあ、こんばんは』
『おわあ、こんばんは』
『おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ』
『おわぁあ、ここの家の主人は病気です』
 ——萩原朔太郎『月に吠える』より「猫」

◎対価とか等価交換とか(3)

 現代社会はあらゆることが金銭的価値に置き換えられて判断しようとする習性が満ち満ちているけれど、金銭に換算できない価値は多い。というより、よくかんがえてみれば金銭に換算できないことのほうがはるかに多いのだ。そのことを資本主義経済のなかで生きている現代人の多くが忘れてしまっている。
たとえば道を歩いていてふと見上げたとき目にはいってきた夜の星。これに値段がついているだろうか。しかし、この光景は、少なくとも私にとってはとても大切なもので、これが見られない人生なんてかんがえることはできない。
 道ばたに咲いている野草の花も金銭に置き換えることはできないが、これをなにより大切に思っている人はたくさんいるだろう。
 表現行為もおなじで、子どもが歌をうたったり、絵を描いたり、大人でも朗読したりといったことは、金銭に換算できることはできない。できないのだが、なにより大切なことかもしれない。
 表現行為を金銭換算することをやめよう。

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