2012年4月16日月曜日

4月16日

◎今日のテキスト

 らいちょうさま、
 このほどお体は如何《いかが》で御座いますか。爽《さわ》やかな朝風に吹かれるといかにもすがすがしくて、今日こそ、何もかもしてしまおうと、日頃のおこたりを責められながら、私は、貧乏な財袋《さいふ》よりもなお乏しい頭の濫費をしつつ無為な日を送っております。
 御あたりはお静かでございますか。田舎での御生活は、どこやら不如意なようでいて、充実されたものであろうと、お羨《うらやま》しくぞんじます。あなたのお体にもよし、御家庭にもしみじみとした味の出た事と存じます。お子さまがたは、御自分たちのお母さまとして、日夜お傍《そば》に親しむことのお出来になるのを、どんなに現わし得ない感謝をもって、およろこびなされている事かと、あたくしでさえ嬉しい心地がいたします。そして風物は悠々として、あなたの御健康を甦《よみが》えらせていることとぞんじます。
 ——長谷川時雨「平塚明子(らいちょう)」より

◎ジャズ

 ジャズという音楽は即興演奏に価値を置いている。いま、この瞬間、自分がどのような音を出したいのか、なにをいいたいのかに向き合って、マインドフルに演奏を進めていく音楽がジャズだといえる。
 ジャズ意外の音楽はクラシックもポップスもロックも、ほとんどがあらかじめ決められた進行がある。とくにクラシックはすべてが楽譜に書かれていて、そこから逸脱した音は単なる「ミス」と見なされてしまう。ジャズは逆に、いかに逸脱するか、いかに他人がやらなかったことを自分がやるか、ということに価値を見いだそうとする。
 マインドフルネスを学ぼうとする者は、このジャズの精神に触発されることは多い。もっとも、ジャズ音楽もある一定の「っぽい」とか、形式におちいってしまっては、伝統音楽となにも変わらなくなってしまうわけだが。

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