2013年1月21日月曜日

1月21日


◎今日のテキスト

 祖父は泉水の隅の灯籠《とうろう》に灯を入れてくるとふたたび自分独りの黒く塗った膳の前に胡坐《あぐら》をかいて独酌《どくしゃく》を続けた。同じ部屋の丸い窓の下で、虫の穴がところどころにあいている机に向って彼は母からナショナル読本を習っていた。
「シイゼエボオイ・エンドゼエガアル」と。母は静かに朗読した。竹筒の置ランプが母の横顔を赤く照らした。
「スピンアトップ・スピンアトップ・スピンスピンスピン――回れよ独楽《こま》よ、回れよ回れ」と彼の母は続けた。
「勉強がすんだらこっちへ来ないか、だいぶ暗くなった」と祖父が言った。母はランプを祖父の膳の傍に運んだ。彼は縁側へ出て汽車を走らせていた。
「純一や、御部屋へ行って地球玉を持ってきてくれないか」と祖父が言った。彼は両手で捧げて持ってきた。祖父は膳を片づけさせて地球儀を膝の前に据えた。祖母も母も呼ばれてそれを囲んだ。彼は母の背中に凭《よ》りかかって肩越しに球を覗《のぞ》いた。
 ――牧野信一「地球儀」より

◎音読療法関連の本

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