2013年1月15日火曜日

1月15日


◎今日のテキスト

 東より順に大江橋《おおえばし》、渡辺橋《わたなべばし》、田簑橋《たみのばし》、そして船玉江橋まで来ると、橋の感じがにわかに見すぼらしい。橋のたもとに、ずり落ちたような感じに薄汚《うすぎたな》い大衆喫茶店《きっさてん》兼飯屋《めしや》がある。その地下室はもとどこかの事務所らしかったが、久しく人の姿を見うけない。それが妙《みょう》に陰気《いんき》くさいのだ。また、大学病院の建物も橋のたもとの附属《ふぞく》建築物だけは、置き忘れられたようにうら淋《さび》しい。薄汚《うすよご》れている。入口の階段に患者《かんじゃ》が灰色にうずくまったりしている。そんなことが一層この橋の感じをしょんぼりさせているのだろう。川口界隈《かわぐちかいわい》の煤煙《ばいえん》にくすんだ空の色が、重くこの橋の上に垂れている。川の水も濁《にご》っている。
 ――織田作之助「馬地獄」より

◎無理しなくていいですよ

 音読療法で老人ホームを訪問して呼吸法などをやっていると、身体の痛みのためにうまく呼吸ができない、息を大きく吸えない、といった訴えを聞くことがしばしばある。そういうときについ「無理しなくていいですよ」「痛むならやらなくていいですよ」といってしまいがちなのだが、音読療法ではそのようないいかたはしないように努めている。
 共感的コミュニケーションを使って、その人がなにを大切にしているのか推測する。
「本当はご自分もみなさんとおなじように呼吸法をやりたいのに、痛みがあってできないのがつらいんですか?」
 この質問を「共感を向ける」という。

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