2013年1月13日日曜日

1月13日


◎今日のテキスト

 信吉《しんきち》は、学校から帰ると、野菜に水をやったり、虫を駆除したりして、農村の繁忙期《はんぼうき》には、よく家《うち》の手助けをしたのですが、今年は、晩霜《ばんそう》のために、山間《さんかん》の地方は、くわの葉がまったく傷《いた》められたというので、遠くからこの辺《へん》にまで、くわの葉を買い入れにきているのであります。米の不作のときは、米の価《あたい》が騰《あ》がるように、くわの葉の価が騰がって、広いくわ圃《ばたけ》を所有している、信吉の叔父さんは、大いに喜んでいました。
 信吉は、うんと叔父さんの手助けをして、お小使いをもらったら、自分のためでなく、妹になにかほしいものを買ってやって、喜ばせてやろうと思っているほど、信吉は、小さい妹をかわいがっていました。
 ――小川未明「銀河の下の町」より

◎緊張したときには(一)

 ひと前に出てなにかをやろうとしたとき、ひどく緊張してしまって、いつもできていることがまったくできなくなったり、頭のなかが真っ白になってしまうことがある。
 いまでこそ私はあまり緊張しなくなったが、かつては緊張のあまり失敗することがよくあった。いまだにはっきりおぼえているのは、小学生の時分、ピアノをひと前で弾く機会があって、そのときにひどく緊張してあがってしまい、いつもは練習で弾けている曲が出だしからめちゃくちゃになってしまって大失敗したことだ。
 おさないころには思いもしないことだが、小学校も高学年になり、しかもだれかから「評価される」という音楽の世界では、他人の目が気になってそのことがいちじるしく緊張を生むようになる。

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