2013年2月1日金曜日

2月1日


◎今日のテキスト

 仕事をしながら、龍介は、今日はどうするかと、思った。もう少しで八時だった。仕事が長びいて半端《はんぱ》な時間になると、龍介はいつでもこの事で迷った。
 地下室に下りていって、外套箱《がいとうばこ》を開《あ》けオーバーを出して着ながら、すぐに八時二十分の汽車で郊外の家へ帰ろうと思った。停車場は銀行から二町もなかった。自家《うち》も停車場の近所だったから、すぐ彼はうちへ帰れて読みかけの本が読めるのだった。その本は少し根気の要《い》るむずかしいものだったが、龍介はその事について今興味があった。彼には、彼の癖として何かのつまずきで、よくそれっきり読めずに、放ってしまう本がたくさんあった。
 龍介はとにかく今日は真直《まっすぐ》に帰ろうと思った。
 ――小林多喜二「雪の夜」より

◎動きながら音読してみる

 音読・朗読というとついつい座って読むものと思いこみがちで、せいぜい立って読むくらいしかかんがえつかないが、いろいろ動きながら読んでみるのもおもしろい。
 歩きながら読む、立ったり座ったりしながら読む、寝転んだまま読む、身体をひねりながら読む。それぞれ身体つきが変わり、身体の内部構造も変化するので、当然声にも変化があらわれる。声ばかりでなく、心理面にも変化があらわれることに気づくかもしれない。
 気分が変わると身体つきや構えが変わるのだが、逆に身体つきや構えを変えることで気持ちが変わる。そのことを声の変化から観察できる。

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