◎今日のテキスト
「ではみなさんは、そういうふうに川だと云《い》われたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。」先生は、黒板に吊《つる》した大きな黒い星座の図の、上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところを指《さ》しながら、みんなに問《とい》をかけました。
カムパネルラが手をあげました。それから四五人手をあげました。ジョバンニも手をあげようとして、急いでそのままやめました。たしかにあれがみんな星だと、いつか雑誌で読んだのでしたが、このごろはジョバンニはまるで毎日教室でもねむく、本を読むひまも読む本もないので、なんだかどんなこともよくわからないという気持ちがするのでした。
——宮沢賢治『銀河鉄道の夜』より
◎人の呼吸を感じる
「沈黙の朗読」という公演をおこなった。そのときの参加者の感想で「沈黙になったとき自分以外の人の息をする気配を感じて、自分の呼吸にも意識が向かった」というものがあった。まさにマインドフルの状態になったのだ。
朗読は「沈黙の朗読」でなくても、音のない時間がとても多い。「間合い」と呼ばれる時間は沈黙している時間だといっていいだろう。音楽はかなり静かな演奏だとしても、音はほとんど途切れることなく続いている。音と音の間に沈黙があるとき、人はさまざまなことを感じ、いろいろなイメージを想起するらしい。
ノリノリの音楽ライブや公演もいいが、たまにはとても静かな朗読公演を聴きにいってみるのもいい。
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