◎今日のテキスト
寒い冬が北方から、狐《きつね》の親子の棲《す》んでいる森へもやって来ました。
或朝《あるあさ》洞穴《ほらあな》から子供の狐が出ようとしましたが、
「あっ」と叫んで眼《め》を抑《おさ》えながら母さん狐のところへころげて来ました。
「母ちゃん、眼に何か刺さった、ぬいて頂戴《ちょうだい》早く早く」と言いました。
母さん狐がびっくりして、あわてふためきながら、眼を抑えている子供の手を恐る恐るとりのけて見ましたが、何も刺さってはいませんでした。母さん狐は洞穴の入口から外へ出て始めてわけが解《わか》りました。昨夜のうちに、真白な雪がどっさり降ったのです。その雪の上からお陽《ひ》さまがキラキラと照《てら》していたので、雪は眩《まぶ》しいほど反射していたのです。雪を知らなかった子供の狐は、あまり強い反射をうけたので、眼に何か刺さったと思ったのでした。
――新美南吉「手袋を買いに」より
◎夜更かしもストレスの一種(一)
現代人はさまざまなストレスにさらされている。交通事故にあいそうになったり、階段から落ちそうになったり、といった物理的ストレス。上司からしかられたり、人間関係がうまくいかない、といった心理的ストレス。これらはいずれも「おなじストレス反応」としてあらわれる。すなわち、交感神経が昂進し、鼓動が速くなったり、呼吸が浅くなったり、体温が上昇したりと、消耗的な身体状態におちいる。
頭では物理的ストレスと心理的ストレスが別物だと思っていても、身体はそれらを区別せずおなじ対処反応をおこなうのだ。
そしてもうひとつ、生理的ストレスというものがある。たとえば、夜更かしをする、という生活リズムの狂いそのものがストレス反応を引きおこす、ということだ。
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