◎今日のテキスト
善《ぜん》ニョムさんは、息子達夫婦が、肥料を馬の背につけて野良へ出ていってしまう間、尻骨の痛い寝床の中で、眼を瞑《つぶ》って我慢していた。
「じゃとっさん、夕方になったら馬ハミ(糧)だけこさいといてくんなさろ、無理しておきたらいかんけんが」
出がけに嫁が、上《あが》り框《かまち》のところから、駄目をおして出ていった。
「ああよし、よし……」
善ニョムさんは、そう寝床のなかで返事しながらうれしかった。いい嫁だ。孝行な倅《せがれ》にうってつけの気だてのよい嫁だ。老人の俺に仕事をさせまいとする心掛《こころがけ》がよくわかる――。
——徳永直「麦の芽」より
◎筋トレ
動物は筋トレをしない。と思う。
猫を見ていると、子猫のころはしきりに遊んで、ひょっとしてそれは身体能力を鍛えるための行為ではないかと思うことがあるけれど、成長してしまうとほとんどそのようなことはしない。無駄な動きはいっさいしない。
一方、人は大人になっても、せっせと走ったり、ジムに通ったり、ウォーキングしたりと、自分の身体能力を維持することにつとめる。
人は思考能力があり、自分の身体能力がそれに比して衰えていくことに抵抗したいのかもしれない。たしかに、衰えていく筋力は、トレーニングによってしか回復できない。
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