◎今日のテキスト
寝つきりに寝つくようになる少し前に修善寺へ行った。その頃はもうずいぶん衰弱していたのだが、自分ではまだそれほどとは思っていなかった。少し体を休めれば、じきに元気を回復するつもりでいた。温泉そのものは消極性の自分の病気には却ってわるいので、私はただ静かな環境にたったひとりでいることを欲したのである。修善寺は前に一晩泊ったことがあるきりで、べつにいい所だとも思わなかったが、ほかに行くつもりだった所が、宿の都合がわるいと断って来たので、そこにしたのだった。
——島木健作「赤蛙」
◎音読療法士は二十四時間の仕事
なにか自分で対処できない不安感や、逃れられない反芻思考に陥ったときには、いつでも電話してくれていいですよ、といって自分の電話番号を開示している。
実際にそれで電話がかかってくることがしばしばある。
電話越しに音読療法をおこなう場合、まずは共感的コミュニケーションであり、それから呼吸を合わせることだ。電話越しであっても、呼吸を聴くことはできるし、またこちらの呼吸を伝えることはできる。
何度か夜中に対応したことがあり、それは普通にかんがえればやりたくない仕事かもしれないが、実際には「だれかの役に立った」「それでだれかが救われた」という実感を持てたとき、まったく苦ではない。
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